無機質な恋模様
歩道橋の上で、ヒカルと、同年代の少年が何やら言い争っているようだった。


声までは聞こえないが、少年が肩に置いた手を、彼女は乱暴に振り払ったりしている。


あれが「山本君」だろうか。


「どういう事だよ!」

「どういう事って、そういう事よ!」


階段の下に差し掛かった所で、二人の会話が耳に届いた。


「俺のこと好きじゃないって事かよ!」

「そうよ!」


ヒカルも少年も、かなり興奮している。


「ためしにデートしてっていうから、来ただけだもの!もう気は済んだでしょっ」

「お前っ…」


少年は再びヒカルの肩に手を置いた。


「ヒカル」


私は彼女に声をかけた。


何かトラブルが起きているのなら、私が助けてあげなければ。


それが私の仕事だから。


ヒカルはハッとしたようにこちらに視線を向けた。


私の姿を認めた瞬間、表情が強張る。


まただ。


ヒカルの瞳は今にも泣き出しそうに、ユラユラと揺れていた。


「そうやって男をとっかえひっかえしてんだな!噂通りだったよ、お前!」


「離してよっ」


ヒカルは少年の手を払い、後ずさった。


しかし、足を踏み出した先には地面は無く……。


それを視覚で捉えたのと同時に私は食材を放り出し、駆け出した。


「キャー!」


空中に投げ出されたヒカルを受け止める為に。
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