ずっとお前を待ってるから
「で逃げてきた、と?」

「う、うん…」

「なんで、逃げてくるのよ!」

「だって…っ」

廊下を歩いていた海に思わず抱き着き事情を説明した。羨ましいとでもいうような顔を最初していたが話を聞いている最中に額を突っつかれた。

「い、痛いよ…っ!」

「あんたね、馬鹿なの?あんなに夢にまで出てきた想い人に対してその態度は彼が可哀想よ」

「う…」

「でも、あんなにかっこよければ他の女の子が黙っちゃいないでしょうね」

「…」

「あーぁ、彼かわいそーに。柚那を想って話し掛けてきたのに。可哀想なこと」

「わ、わかったよ…っ!ちゃんと話してきますよ…っ!」

じりじりと追い詰めるように言葉を言う海に私は観念しお弁当をかけ込みご馳走様と一言、海に言い彼の元に向かう。あの時の海の顔はそれはそれはさも楽しそうに微笑んでいた。

「あ、あの…っ」

「…なんだよ」

「さっきは…ごめんなさい」

「俺の事覚えてないって言ってたじゃねえかよ」

廊下を歩いていた彼の後ろ姿に話し掛けるがこちらを向かず突き放すような言葉に胸が痛んだ。海に言われて彼を探しに来たのもあるが、本音は彼ともっと話したかったから。

「ご、ごめんなさい…本当は覚えてるの…冬二の事」

「…」

「嘘、言って…ごめんなさい」

「…ったく」

彼と視線を合わせる事が出来ず下を向いたままでいると突然抱き締められた。何が起こったか分からず唖然としていると生徒達の声で我に返る。

「ちょ、っと離してっ…!」

「お前に会いたくて会いたくてやっと親の了解を経て転校してきたって…お前に嫌われたかと思ったじゃねえか…馬鹿野郎」

耳元で言われた言葉に私の顔はみるみる裡に赤くなっていくのがわかる。視線どうこうよりも彼の真剣な言葉に胸の高鳴りは止まなかった。
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