イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
……しかし。

ぽんぽんと肩を叩かれる感覚と、「一葉」と呼ぶ声で、はっとした私の目に映ったのは、いつの間にか暗闇に包まれている景色。


「あれっ!?」

「よく寝てたな。着いたぞ」


シートから背中を離すと、薄く笑みを浮かべて私の顔を覗き込む零士さんが間近にいて、心臓がぴょこんと跳ねる。

私、結局眠っちゃったのか…………っていうか!


「ん!? ここどこですか!?」


てっきりアパートまで送ってくれるものだと思っていた私は、車窓から見える景色が明らかに違うことに気付いてギョッとした。

キョロキョロと見回すと、周りにはたくさんの車が並んでいて、どこかの駐車場にいるのだとわかる。そして駐車場の向こうには、建物の陰から色とりどりの明かりが少し見えている。

もしかして、イルミネーション……?


何で?と疑問ばかりが渦巻いてぽかんとしていると、車を降りた零士さんが助手席側に回ってきた。

ドアを開け、私に手の平を上に向けて差し出してくる。


「ほら、行くぞ」


見上げた彼は優しく微笑んでいて、差し出された手にもドキリとする。

まだ訳がわからないけれど……誘(いざな)われるままに、少し遠慮がちに手を伸ばしてみた。

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