イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
本当によかった、部長が機転を利かせてくれて……。

改めてピンチを救ってもらえたことに胸を撫で下ろしていると、少しだけ歩調を緩めて私の隣に並んだ彼が問い掛ける。


「お前こそ何であの店にいたんだ? あそこは池田の担当だろ」

「あ、頼まれたんです。外に休憩しに出るなら、ついでにパンフレットを届けてほしいって」


池田さんという、例の男性社員とのやり取りを簡単に説明した。

それを聞いた部長は細い顎に手を添え、少し考えを巡らせるようにしてから、こんなことを言う。


「……そうか。じゃあここに来た時間分、ヤツにお前の仕事振り分けろ」

「えっ!?」


それは予想外の返しで、彼を振り仰いだ私の声は裏返ってしまった。

部長は暑さをものともしない涼しげな瞳で、私をちらりと見下ろす。


「言えないなら俺から言ってやる」

「や、そんな、いいですよ! たいした手間じゃなかったし……」

「そういう問題じゃねぇ」


慌てて制する私の言葉をぴしゃりと遮り、整った顔を険しくする彼を見て、私はカチッと固まった。

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