ゆえん
けたたましくサイレンが鳴り、夕方の空に異様な炎が浮かび上がったその日、俺は自分の目的地と、炎のある位置が同じでないことを祈りながら走っていた。
悪い予感は外れてはくれなかった。
楓と瞳さんが住むアパートから黒い煙と炎は上がっていた。
俺は夢中で楓の名前を呼んだ。
「浩介」
楓は既に外に出ていた。
「良かった。瞳さんは? 居ないのか」
「一回出てきたんだけど、どうしても持ってきたいものがあるって聞かなくて」
楓の声が震えている。
「まさか、また入っていったのか?」
楓は泣きながら首を縦に振る。
「助けなきゃ」