ゆえん
冬真と沙世子は大学を卒業しても付き合い続けた。
二十五歳のときに沙世子からのプロポーズで二人は結婚した。
会社を辞めた沙世子は再び『ティンカーベルハット』でパートを始めた。
彼女が自分で美味しいと思ったケーキを記録したり、レシピを考えたりし始めたのはこの頃だった。
冬真と沙世子は相変わらず『Rai』に顔を出して、葉山夫妻とは家族ぐるみの付き合いが続いていた。
自分の隣で沙世子が幸せそうに微笑んでいる。
浩介と楓のような夫婦になった気がして、冬真はそれができる自分を、自分で認められるようになっていた。
結婚して二年後には二人の間に女の子が生まれ、真湖と名づけた。
冬真にとってこれ以上ない幸せな日々だった。