ゆえん
「うん、私も憧れてしまう。楓さんみたいになれたらって。でも、どうしたらいいのかわからなくって悩んでいたの。でも最近、お菓子作りが私に小さな自信と喜びを感じさせてくれるようになって気付いた。自分らしさを持つことが憧れている人に近くなれるということなのかもしれないね」
その気持ちは冬真にも良く理解できた。
独特の音楽性を持ち、行動力のある浩介に憧れていた。
憧れるだけではなく、自分も作ってみることで冬真は自分らしいものを掴めてきた気がしていた。
たとえスケールの大きさは違っても、自分の表現が出来るということは喜びだ。
沙世子と共感できる部分を発見するたびに、自分にとっての彼女の存在がより大きくなっていることを冬真は感じていた。