ゆえん


ドリンクバーは、学生層に大好評で、前にも増して『You‐en』のカフェコーナーにやってくる学生が増えた。

特に高校生のお財布事情には救いの手になっているらしく、午後四時から六時半までは高校生同士の社交の場と化してきていた。

ドリンクの注文がほとんどであっても、何かのイベント後や、誰かの誕生日とかで、デザートの売り上げも伸びてきた。


「これ、食べているだけで幸せな気分になるくらい美味しい」


そんな女子高校生たちの声が冬真に届くたびに、冬真の心にも喜びの波がやってくる。

意外とこの仕事に向いているのかもしれない。

自分でそう感じ始めていた。

そんな『You‐en』の中で、一際目立って理紗がいた。

毎日ホットカフェオレを頼み、ドリンクバーは利用しない。

カフェコーナーに来る前にスタジオの窓を少し覗き、帰る時もまたちらっと覗いていく。

時折、窓の前に立っている時間が長い時もあって、軽くリズムを刻みながら体を振っている。

スタイルも良くて垢抜けた印象の彼女に、男子高校生の視線が自然と寄せ付けられる。

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