ゆえん
沙世子と似ているけれど、やはり別人なのだ。
理紗の姿が目に入るたびに、二人の持つ個性の違いを冬真は見つけ出していた。
顔は似ていても、印象が違う。
髪型だってダークブラウンの柔らかいロングヘアーだった沙世子とは違い、彼女は真っ黒で直線的なストレートロングだった。
着るものの好みも明らかに異なっていた。
落ち着いた中にも可憐さが漂う沙世子と、どこか挑発的で攻撃的な印象を感じる理紗という女性。
それなのに、顔や体型はそっくりだ。
メイクの違いは、沙世子であることを隠しているのかも、と思ってしまうほどに。
理紗の姿はもちろん楓の目にも映っていた。
「最近、高校生のお客さんが増えたのはドリンクバーの効果だけじゃないみたいね」
冬真は苦笑いしてみせる。
「あのコ、『Rai』でもよく見掛けたの。初めて近くで顔を見た時は、心臓が止まるかと思ったほどだった。沙世ちゃんに似ているでしょう。でもやっぱり、中身は別人なんだよね。浩介もそう言ってた。だからって訳でもないのだけど、わざわざ冬真君に言うのはどうかなって思っていたの。だけど、こっちにも通うようになったのね」