ゆえん


持ってきていたノート型パソコンを開いた。

気持ちが浮足立っている。

この家でパソコンを開いたのは初めてだったので、インターネットが繋がらなかった。

リビングに戻り、そのことを冬真さんに伝えると、彼はすぐに私のパソコンでもインターネットが使えるようにしてくれた。


「ありがとうございます。早速調べてみますね」

「そんなに急がなくて大丈夫だよ。今日はもう遅いし、ゆっくりでいいから」

「はい。でもなんか初めてなんです。こういうの」

「こういうの?」

「やってみたいって思ったもの」


言葉にしてから自覚した。

生活のためとか、寂しさを紛らわすためにすることではなく、純粋にやってみたいと感じたことは初めてかもしれない。

その時冬真さんが一瞬静止していた。

不思議に思って彼の顔を見つめると、我に返った冬真さんは「無理しない程度にね」と微笑み、リビングへと戻っていった。


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