ゆえん


「四年前か……四年前、因果的に残りそうだ……」


修二も気付いたのだろう。

その言葉を繰り返し、呟いた。

冬真の横で、理紗が小刻みに震えだした。

顔色も良くない。


「寒いの? 具合が悪い?」


冬真が訊くと、理紗はびくっと冬真の横から立ち、歩き出した。

腕時計を見て、顔を顰めた修二は伝票を掴み、手を上げて席を立つ。


「悪い、そろそろ戻らなきゃいけないんだ。また連絡をくれよ。一度ゆっくり飲もう」

「ああ。今日は急に悪かったな。また今度」

「いや。理紗とも話が出来て良かった。感謝してるよ、お前にはいつも」


冬真は小さく微笑み、理紗の後を追い掛けていった。

理紗に追いついた冬真は、彼女が逃げるように歩くのが不思議でならなかった。

思わず理紗の腕を掴んだ。

理紗が立ち止まる。


「どうした、急に」

「店長さん、修ちゃんって」

「なに?」


振り返った理紗の目に、逆方向へ歩き遠ざかっていく修二の後ろ姿が映った。

それは体型の崩れだしてきた中年のサラリーマンにしか見えず、理紗は心の中で、大学時代の修二の姿が粉々に崩れ落ちて、消えていくのを感じていた。


「もうおじさんだね」


先ほどまでの感情は何処へ隠しているのか、理紗は微笑んでいた。


「きつい一言だな。それなら俺もおじさんだね」


冬真は苦笑いをして見せ、掴んでいた理紗の腕を離した。


「私って、馬鹿みたいですね」


理紗の瞳にはキラキラと涙が揺れていた。


「帰ろうか」


冬真が声を掛ける。

理紗はこくりと頷いた。

同時に目から涙が頬に落ちた。


「帰ろう」


理紗の頭を包むように手を伸ばし、冬真は言った。

冬真の肩に額を預け、理紗は大きく深呼吸してから再び頷いた。




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