キミのコドウがきこえる。

成美の「それだけじゃない」という言葉の裏に何が含まれているのか。

私の「それだけじゃない」と成美の「それだけじゃない」は……同じだ。


手についた泡を水で流しながら、私に満面の笑みを向けてくれた成美に恥ずかしくないように翔太が好きだということを認めてまっすぐに向き合おうと思った。

はっきりしない今までの「お姉ちゃん」とはさよならだ。

「よし」と気合を入れ、綺麗に拭きあげた食器を食器棚に綺麗に重ね翔太のいる役場へ向かうために身支度を整えた。







役場途中の翔太の下宿先の花竜にあと数十メートルというところで、頭の後ろにぴょっこりと寝癖をつけた翔太があくびをしながら花竜から出てきた姿が目に入った。



「翔太!」



私の声を聴いた途端、眠そうな目をしていた翔太がぱちっと目を開け私の方を見た。

そして私と目が合うと、人懐っこい笑顔でにこっと微笑んだ。


たったそれだけのことなのだけれど、私の声で表情を変えた翔太の姿に心が躍った。

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