未熟女でも恋していいですか?
開き過ぎない花の色は淡いピンク色に染まり、それがやがて白に変化する。

ピンクから白に変わり始める頃の色合いが好きだ。

母と一緒に眺めながらお互いに写真を撮り合ったものだった。



(あっ……そう言えばあの写真は……?)


壁塗りを頼んだ時に見せた子供の頃の写真を返してもらってない。

高島が寝泊まりしていた和室の何処にもそれは置かれていなかった。



(……と言うことは、あの人がまだ持っているということ?)


二度目の出会いが縁ならば、三度目は必然ということだろうか。

会いに行かなければ返してもらえない。

あんな写真一枚きりでも、私の個人情報には違いない。



(明日、出かける前にお寺に寄ろう。写真を受け取って、それからショッピングに行こう……)


そう決めると気分が晴れやかになった。

高島に会える口実ができただけで、何故こんなにも気持ちが沸き立ってしまうのだろう。


恋なんてできない自分だと分かっているのに、やはり想う相手には会いたくなる。

会ってこれまで通りの会話をして別れよう。

明日が最後になってもいいから笑顔で話がしたい。



本当は少しも別れたいと思っていないけれど、そうするのがベストだと思った。

自分の過去を晒してしまった男と、これからも顔を合わせ続けていくのは相当な覚悟が必要になる。


(今日話したことをあの人が直ぐに忘れてくれるのなら別だけど……)


できもしないことを願うのはやめて中へ戻った。

玄関の扉を開けようとした時、花の色と壁の色とが全く同じに見えて、


(ああ、綺麗だなぁ…)


と、しみじみ感動させられた………。


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