未熟女でも恋していいですか?
朝を迎えてドキドキしながら身支度を整えた。

ショッピングに出かけるつもりでいるから、それなりに普段と違う格好をしている。


通勤スタイルは常にパンツルック。

でも、今日は久しぶりにスカートを穿いた。


(は、初めてかも…)


男に会うと知っていながら足の出るものを穿く。

ロングタイプにしたから出ると言っても足首辺りのことだけれど。




「行ってきます」


仏壇の両親に手を合わせて外へ出た。

朝から良く晴れて、陽気のいい一日になりそうだった。



「今日のうちに満開になるかもしれないな」


藤棚の下が濃いピンクに染まっている。

夕方に帰り着いた頃は、白く変化していることだろう。



ふ…と大分前に見た夢のことを思い出した。

あの藤棚の下で、無邪気に笑う私を父が力強く抱いていた。


きゃっきゃっと笑うのを見ながらお腹を揺する。

だから余計に可笑しくて、大いに笑ってしまった。


面白くて楽しくてずっと見ていたい感動に襲われた。

同時に父のことを思い出して、少しだけ悲しくなった。



亡くなった父は、いつも私を笑わせるような事ばかりしていた。


でも、5歳の誕生日を最後に祝ってもらえなくなった。

持病の肝炎が重症化して、あっという間にあの世に旅立ってしまったからだ。



「もう30年以上になるのか。早いな……」


呟いて庭を後にした。

五月晴れの空を見上げながら両親にどんな未来を見せたらいいのか…と思い、歩み始めた。



< 135 / 190 >

この作品をシェア

pagetop