なみだ雨
やばいやばいと、
アパートの階段を上る。
すっかり冷たくなった手で荷物を持ち替え、鍵を出して前を向いたとき、
玄関の前に人がうずくまっていた。
足音で気がついたのか、
顔を上げると、はるかだった。
はるかは怠そうに立ち上がる。
「どうしたんですか?鍵は」
「すみません」
無くしました、そう言おうとすると
練が微笑んで口を開いた。
「いつからここにいたんですか?寒かったでしょう」
「すみません」
練が鍵を開けるとはるかを入るように促した。
素直に、でもちょっと申し訳ないように部屋に入る。
中は外よりもっと寒かった。
冷蔵庫に野菜を入れていく。
はるかはその後ろ姿を見つめながら、
「探したんですけど、どの道から帰ってきたのかわからなくて。明日また探しに行きます。だから、朝同じ時間に出ます」
「明日は仕事休みなんです、有給で。なので明日鍵作ってきます」
練より2回りくらい小さいはるかが、
今はなんでかもっと小さく見える。
「なにかあったんですか?」
しばらくの沈黙。
それからはるかが首を横にふる。
何かあったのだろうとわかる。
でも、確信はなくて、
練は冷蔵庫をしめた。