なみだ雨
家に着いて、全体を眺める。
さっきまではるかはがいたキッチン。
食器にはまだ乾いていない雫。
はるかはもうここにはいないのだと、
痛感する。
隣の部屋の玄関が開く音がする。
つぎに聞こえてくるのは、
「パパいってらっしゃい」
練はその場にしゃがみこんだ。
前の生活に戻っただけなのに、
どうしてこんなにも胸がざわつくのだろう
いつの間にこんなに
はるかの存在が大きくなっていたのだろう
ため息をひとつついた。
天井を見上げる。
俺の選択は合っていたのだろうか。
ここで、はい、そうですかと、
帰してしまってよかったのだろうか。
また暴力を振るわれたら
また襲われたら
また会える時は、あの子は
俺に微笑んでくれるだろうか。