その瞳をこっちに向けて
「冷た……」
そう呟くと固く握り締められていた掌をそっと開いて視線を落とす。
あっ。
これ、……どうしよう。
掌の上にあるのはキラキラと輝く美音さんのペンダント。だが、仁先輩が持っていたペンダントは川に投げられてしまったものだから、今更渡すのもどうなんだっていう。
一人首を捻った所で、ぽすん…と頭の上に何かが落ちてきた。
「それ、タオル」
「あっ、ありがとうございます」
中畑先輩の声に慌てて掌にあるペンダントをポケットに突っ込むと、頭の上のタオルを手に取り水滴のついた身体を拭いていく。
そんな私の側に中畑先輩がタオルで髪を拭きながらやって来ると、目を細めてじっと私を見た。
その行動に「どうかしました?」と訊いてみるも返事はないまま。
「あのー。中畑先輩?」
首を傾げた瞬間、スーと中畑先輩の手が私の方へと伸びてきて。そっと私の服の裾を少しだけ摘まむ。
そして困ったような顔を向けた。