その瞳をこっちに向けて



着替えるって事は服を脱ぐって事で。

人様の家で、それも中畑先輩の家で。

しかも中畑先輩しか居なくて。

一応これでも私も女の子なわけですし。


それって、…………ど、……どうなんでしょうか!?



グルグルとそんな考えが頭の中で回り続けてフリーズ状態になっていたその時、中畑先輩のぶっきらぼうな声が響く。


「家、濡れるから」

「あー、ですね」



うん。そんな事だろうと思ってたけどね。



 一応滴が落ちない程度に拭き終わると、中畑先輩に言われた通り脱衣場へと向かう。ドアを開ければ直ぐに綺麗に畳まれた黒いジャージの着替えが置かれていた。


そっと手に取ってみると、胸の所に『中畑祐』という名前が書かれていて。多分、昔中畑先輩が着ていたものなのだろう。


その黒のジャージに着替えようと濡れたTシャツを脱いだ所で、ふと手を止めた。



これ、……下着も濡れてるんですがっ!!



かと言って下着の着替えが置かれている筈もなく、下着を借りるってのもどうかという話で。


 結果、滴が落ちないからこのままでいっか。という考えの基、そのまま黒のジャージに袖を通した。

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