その瞳をこっちに向けて
『はぁ』以外の言葉が見付からなかったのだが、特にその事に中畑先輩の突っ込みが入るわけでもなくキッチンへ。
結局、中畑先輩が何を言いたかったのか分からないまま仕方なしに、さっきまで中畑先輩が座っていたソファーへと腰を下ろした。
「はい」
少ししてカチャンという音と共に目の前のローテーブルにソーサーに乗ったティーカップが置かれる。湯気がたっているその中身はどうやらココアらしい。
「あっ、どうも」
「今更だけど、ココア大丈夫?」
「大好きです!」
目の前でふわりと香る大好きな甘い香りに直ぐ様夢中になった私の耳には、その後に「大好き…ね」とポツリと呟かれた中畑先輩の言葉は、記憶に残ることなく通り過ぎていった。
ゆっくりと味わいながらココアを飲んでいる間、中畑先輩といえば、私の真横に座ってブラックコーヒーを飲んでいて。
「それ、苦くないですか?」
「ん?別に。お子ちゃまじゃねぇし」
「それは、暗に私がお子ちゃまだと?」
「さあ?」
中畑先輩のお得意の『さあ?』に思わず顔がひきつる。が、ここは中畑先輩の家で。ジャージまで借りていて。更にはココアまで頂いてしまっているっていう現状。
こんなの、……絶対文句なんか言えないしっ!