その瞳をこっちに向けて


中畑先輩はそういう事も分かってて言ってるからたちが悪い。


でも、……たまーに優しいのも知ってる。


「中畑先輩」

「ん?」

「中畑先輩って、極たまに優しいですよね」

「極たまにって、すっげー失礼なんだけど」

「事実ですから」

「お前な……」


私の発言で、ため息混じりに呆れ顔をしている中畑先輩に再び声を掛ける。


「中畑先輩」


次は何を言ってくるんだ?という訝しむ目を中畑先輩が向けてくるけれど、その勘違いに微笑むとゆっくり次の言葉を口にした。


「私、仁先輩に一目惚れだったんです」

「…………」

「見た目も雰囲気も何もかもが私の理想の王子様だったんですよ。だから、初めは見ているだけで満足してたんです。……なのに、欲がどんどん出てきちゃって」

「そんなの。……本気で好きなら誰でもそんなもんだろ」



中畑先輩ならそう言うだろうなって思ってた。

人の気持ちを絶対に否定しない人だから。

だから、……中畑先輩には言っておくべきだと思う。


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