その瞳をこっちに向けて


 空になったティーカップをソーサーの上に戻すと、中畑先輩へ顔を向ける。


「そういえばですね。私の願いができまして」

「願い?」

「はい。今回はダメだったんで、次の恋は幸せになれる恋をしたいです。まあ、そう思っていても上手くいかないって知りましたけど」


やっぱり自分の思い通りになる恋がいい。


例えば、ベンツに乗った王子様が迎えにやって来る…とか。そんな夢物語が理想。


でも、何処で誰に恋するかなんてなってみないと分からない。恋の入試対策本があるわけでもない。


それが恋愛なのだと今回の事でよく分かった。


だから、願わくば。



ーー願わくば、……次の恋で私も幸せになれますように。



「そのさ。……次の恋の相手はいんの?」

「今は不在です」

「ならさ……」


そこで言葉を切った中畑先輩を不思議に思いながらも次の言葉を待っていると、中畑先輩が両手で顔を覆う。と同時にポツリと声が漏らされた。

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