その瞳をこっちに向けて


「えっ、わけ分かんないんですけど」

「まだ分かんなくていいよ」


 いつもと違い、子供っぽくシシッと白い歯を見せて笑いそう言う中畑先輩からは、私を陥れようなんて考えている雰囲気は微塵も感じ取れない。


そのことで更にわけが分からなくなって首を傾げた。


「何ですか、それ」


そう呟く私の隣で、中畑先輩が楽しそうにクックッと喉を鳴らして笑う。


 分からない事だらけだが、強いて言うなら上機嫌らしいことは分かる。



私が何かを被るわけでもないし。まあ、…いっか。



そう思い直すと、手近にあった椅子を引いた。


 中畑先輩に腕を引かれて来たこの場所は、左右を背の高い本棚に挟まれており、カウンターからも死角となっている。だからか席に腰を下ろすと、ここからは図書室に居る他の人が殆ど見えない。


少し奥に位置する為、ここまで来る人が少ないのもその原因の一つかもしれない。


そんな事をぼけっと思っていると、私の隣の席に中畑先輩が腰を下ろす。

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