その瞳をこっちに向けて
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本を手に取って戻ってくると、本の世界へと足を踏み入れる。
久しぶりの読書で夢の世界へどっぷり肩まで浸かりかけたその時、ふわっと耳元の髪が揺れる。
一瞬窓からの風かと思ったが、クーラーの効いた図書室の窓はしっかりとしまっており、未だ私の髪の毛先を揺らすその原因を探る為に毛先へとスッと横目を向けた。
骨ばった大きな手が、ゆっくりと、けれど何度も私の髪を少し掬っては手を離す。
私の髪を揺らしている原因は、私の隣で頬杖をついて、空いた手でそれを繰り返す中畑先輩の手だ。
何度も繰り返されるその行動に心臓がドッドッドッドッと早鐘を打ち始め、更にカァっと顔が熱くなる。
「えっと。その、……ごみとかついてます?」
「ついてねぇよ。ただ俺が触りたかっただけ」
そっか。……触りたかっただけか。
…………えっ!ナニソレ!?
「なっ、なっ、何ですかそれっ!?えっ、えっ、ええぇぇぇぇぇえ!!それ、本気で言ってます!?」
さらっと言われたまさかの言葉に心臓はもう爆発寸前で。目を見開いて勢いよく中畑先輩の方を振り向くと、中畑先輩の顔が一気に赤へと染まっていく。