その瞳をこっちに向けて


「だから。さりげなく私は貴方の事が好きです!っていう雰囲気をぶつけるのよ」

「なるほど!ぶつけるってそういう意味だったんだ!」

「どういう意味だと思ってたのよ?」

「いやー。てっきり中畑先輩の目の前で、好きです!って連呼してこいって意味かと思ってた」

「んなわけないでしょ!私の経験をなめないでほしいわ」


鋭い突っ込みが入るが、そんな事よりも問題はその後に続いた言葉の方だ。


 まさかのとんでも発言に目を見開く。


「経験!?えっ!?鈴菜って彼氏居たの!?私、聞いてないんだけど!」


そう大声を上げるが、鈴菜はというと涼しい顔をしたまま。そして徐に、机の横に持ってきていた自分の鞄から携帯を取り出した。


 鈴菜の指が画面に触れると、パッと明るくなる画面。そして、その画面を私の目の前にスッと差し出した。


「最近はまってるのよね。これ」


鈴菜の手にしている携帯の画面の中には、6人のイケメン男子のキャラクターと、キラキラと輝く『シンデレラ・ラブラブフォーエバー』のタイトル。サブタイトルらしきものは、『君は誰と恋したい?』と書かれていて。


「これ、……乙女ゲー」


恐る恐るそう訊くと、鈴菜が無言でコクンと首を振る。

< 163 / 206 >

この作品をシェア

pagetop