その瞳をこっちに向けて
「だから。さりげなく私は貴方の事が好きです!っていう雰囲気をぶつけるのよ」
「なるほど!ぶつけるってそういう意味だったんだ!」
「どういう意味だと思ってたのよ?」
「いやー。てっきり中畑先輩の目の前で、好きです!って連呼してこいって意味かと思ってた」
「んなわけないでしょ!私の経験をなめないでほしいわ」
鋭い突っ込みが入るが、そんな事よりも問題はその後に続いた言葉の方だ。
まさかのとんでも発言に目を見開く。
「経験!?えっ!?鈴菜って彼氏居たの!?私、聞いてないんだけど!」
そう大声を上げるが、鈴菜はというと涼しい顔をしたまま。そして徐に、机の横に持ってきていた自分の鞄から携帯を取り出した。
鈴菜の指が画面に触れると、パッと明るくなる画面。そして、その画面を私の目の前にスッと差し出した。
「最近はまってるのよね。これ」
鈴菜の手にしている携帯の画面の中には、6人のイケメン男子のキャラクターと、キラキラと輝く『シンデレラ・ラブラブフォーエバー』のタイトル。サブタイトルらしきものは、『君は誰と恋したい?』と書かれていて。
「これ、……乙女ゲー」
恐る恐るそう訊くと、鈴菜が無言でコクンと首を振る。