その瞳をこっちに向けて
鈴菜の経験っていうのは、間違いなくこのゲームの中の事で。
「リアルは?」
「リアルにそんな経験はないし、これからも必要ないわね」
「マジ?」
「マジよ。リアルで私に必要なのは、お金のみ!」
「いや、そこ友達も入れといてよ」
「じゃあ、友達も」
さらっと足してくれたのは嬉しいが、考える素振りを一切せずにそう断言する鈴菜。
鈴菜らしい対応。……けど。
もの凄い、ついで感出てますけどっ!
そう叫びたくなるが、『だから、何?』とさらっと流されるのも想像がついて、その言葉をグッと呑み込んだ。
その後、
「うん。それでこそ鈴菜だよ」
そう言う私に、「でしょ」という鈴菜はどこか満足気な顔をしていた。
ーーーーー
放課後。
鈴菜が直ぐ様私の席へと駆け寄って来ると、グイッと私へと顔を近付ける。
「分かってる?中畑先輩が来たら、『一緒に帰りた~い作戦』よ」
「了解です」
目の前の鈴菜に向けて、ピシッと敬礼のポーズを取ると、無言で頷く鈴菜。
昼休みと休み時間で必死に考えた作戦、『一緒に帰りた~い作戦』を実行に移す時がきたのだ。