その瞳をこっちに向けて


結局、地味で同学年じゃない私は、こうやって彼の写真を見つめるだけで精一杯なんだ。


まあ、小心者の私は同学年であっても、話し掛けるなんて畏れ多い事出来ないわけだけど。



それにしても、今日のこの写真はかなり上手に撮れたかも。



 写真の中の仁先輩は優しく微笑んでいて、まるで私に笑いかけてくれている様な錯覚に陥る。


このベストショットを撮れたのも頑張って朝早くから学校に来ているからだと思う。


というのも、大抵の生徒の登校時間より朝早くに学校に着く様にしている私は、今日とて違わず学校に到着した私より早くに来ている生徒は、朝練のある部活に入っている生徒だけ。


朝早くに来ると静かで落ち着く。教室で一人本を読むこの時間が好き。なんて理由で来ているわけじゃない。


私が朝早くに学校に来る理由は、登校してくる仁先輩を見る為だ。


そして、あわよくば仁先輩の姿を携帯のカメラで撮って、仁先輩コレクションを増やそうとしているっていう。


そして、今日は校門の所にある木の陰に隠れてこっそりと撮った写真が、まさかのベストショットを叩き出したのだ。

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