その瞳をこっちに向けて


再び仁先輩の写真に見入っていたその時、

「まーきー!!おはよって言ってんでしょ!」

突如として耳の真横でよく知っている声が響いた。


「うわっ!」


驚きから声をあげ慌てて横を振り向けば、そこには仁王立ちで頬をぷうっと膨らませた我が親友、立木鈴菜(タツキ スズナ)の姿が。


 くりっとして少し垂れ目の瞳。ぷっくりとした唇。そして、ふわふわの髪を2つに分け、それを緩いフィッシュボーンにしている彼女は、所謂『見た目癒し系』なんだそうだ。残念ながら口は悪いけど。


そんな彼女の眉尻が少しつり上がっているという事は、どうやら彼女はご立腹らしい。


察するに、何度か私に朝の挨拶をしてくれたのだろう。


「なーにが、うわっ!よ。人が挨拶してるってのに」

「ご、ごめん、鈴菜」


携帯を机に置いて、両手を顔の前でパチンと合わせれば、ニヤッと意地悪に笑った鈴菜の手が机の上の携帯を拐っていく。

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