その瞳をこっちに向けて
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放課後になると、朝の不機嫌から一変、今の私はご機嫌。というのも、放課後の図書室に中畑先輩は居ないからだ。
いつもの定位置に座って、本を読んでいるふりをして仁先輩を見る。
仁先輩のスラッと長い指先がページを捲ろうと弧を描く。その姿に思わず感嘆のため息が漏れた。
仁先輩、格好いい。
「私の幸せ時間はもう放課後のこの時間だけだよ」
一度本に視線を落とし、そうボソッと呟くと再び仁先輩へ視線を戻す。
今日はまた天気が良いから、夕日を浴びた仁先輩の髪が紅に染まり、格好良さを助長させる。
仁先輩の姿に見惚れていたその時、いつものあの声が聞こえてきた。
「仁」
中畑先輩が仁先輩を呼ぶ声。だが、いつもは窓の外に居る筈の中畑先輩が、何故か図書室の中に居る。
仁先輩もその事に驚いたのか、目を丸くしている。