その瞳をこっちに向けて
「祐?どうしたの?」
「いや、俺も仁に倣って本でも読んでみようかなって」
何気無しに、ストンと仁先輩の隣の席に腰を下ろす中畑先輩。
隣に座れるだけでも羨ましいのに、更にここに居座るつもりらしい。
「ふーん。今までそんな事一回も言わなかったのにどういう風の吹き回し」
訝しげに首を傾げる仁先輩に、ニカッと歯を見せ、「何となく…だよ」と答える中畑先輩は図書室には不釣り合いな気がする。
物静かな仁先輩は図書室がしっくりくるけど、明るい中畑先輩には運動場の方が似合ってる。
今までに中畑先輩が図書室で本を読んでる姿なんて一度も見た事なかったのに。
何で今日に限って……ーー
そう思って眉間に力を込めた時、ふっと中畑先輩が私の方へと顔を向けた。そして、ニヤッと嫌な笑みを浮かべる。
こ、これって……。
…………仁先輩を私からガードする為だ!!