その瞳をこっちに向けて
「な、何ですか、その目は!?」
「自分で気付いてないなんて、哀れ…っていう目」
「答えられるのも、ムカつくもんですね」
そう言う私を見て、中畑先輩はケラケラと大きな口を開けて笑い「バーカ」と口にする。
ハッキリ言ってその姿に学校の王子様の片鱗は一欠片もない。
いや、ほんと。
中畑先輩が王子様って呼ばれているのも嘘なんじゃないかって思えてくる。
只でさえ仁先輩を見れなかった事でズーンと気持ちが沈んでいるのに、更に私に好意的ではない中畑先輩に出会ってしまった事に項垂れていると、
「ほら、帰るぞ」
そう言って中畑先輩が私の手から鞄を拐った。
「何するんですかっ!っていうか、何で中畑先輩と一緒に帰るみたいになってんですか。一人で帰れますし。鞄、返して下さいよ!」
ぷうっと頬を膨らませて、中畑先輩の手に移った鞄を再び勢いよく奪い返す。と、中畑先輩の眉間にグッと皺が寄る。
「外、暗いぞ」
「見れば分かりますけど」
そんなのさっきから知ってるし。