その瞳をこっちに向けて


 結局、中畑先輩は私が家の前に着くまで私の鞄を返してくれなかった。というか、私が逃げない様に鞄を返してもらえなかったわけだけど。


 中畑先輩は仁先輩と毎日一緒に帰る幼馴染み。


昨日知った仁先輩の家の場所と私の家とは真逆に位置する。


 つまり、中畑先輩の家も私の家とは真逆にある筈なのだ。なのに、中畑先輩は私の家の前までやって来た。


仁先輩を守る為に。



中畑先輩、…………仁先輩への執着心、半端ないし。

寧ろ怖いくらいだよ。



そう思ってブルッと肩を震わせたのは、その日寝る前のベッドの上だ。


 私以上に仁先輩を好きな人。それが、中畑先輩なんだと思う。

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