その瞳をこっちに向けて


 友達ならありそうな、待ってよっか?なんて台詞なんて1つもない。そもそも、私と鈴菜の家は反対方向っていうのと、今までも私の放課後は図書室タイムだったわけだから、鈴菜と一緒に帰るのは遊んで帰る日だけなわけだけど。


それでもこうやって気分が落ちてる日は、その一言が欲しい気持ちになったりするものだ。



まあ、それって。

…………我が儘ってやつなんだけどさ。



 はぁ…っとため息を吐くと、気合いを少しでも入れようと、椅子に座ったまま両手を上に挙げグッと伸びをする。そして、そのままの勢いで席から重い腰をあげた。


机から離れた身体は、ロッカーに突っ込んである体操服を引っ掴みに行くと、 着替える為に女子トイレへ。


 更衣室で着替えた方がいいとは分かっていても教室から離れている更衣室にわざわざ行く気も起こらず、この学校の女子は殆どが女子トイレで体操服に着替えているというわけだ。


 着替えが終わりトイレから出ると、運動場の時計下へ向かう為に歩を進めていく。


廊下は体育祭の準備やらでか、思いの外騒がしく色々な声が飛び交っている。

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