その瞳をこっちに向けて


先輩へと軽く頭を下げながら、スッと私の方へ歩いて来ると、腰を少し屈めて自分の顔を私の顔に近付け耳打ちする。


「ふーん。お前もリレーなんだ。よろしく、ストーカーの麻希ちゃん」



出たっ!中畑先輩の嫌がらせ!



「ち、違っ…」


そう声を荒げて否定しようとした時、「よーし。じゃあ順番決めて練習するぞ!」という気合いの入った3年の先輩の声が響いた。


 話はとんとん拍子に進み、当然ながら私の順番は12人いるから6番に。


そして不運の嵐は未だ止む事はないのか、私がバトンを渡す相手は、私の遅れを取り戻せるだけの相手という理由で中畑先輩になってしまったっていう。



ほんと今日の不運感……半端ない。



 一度全員で試しに走った後に解散となったのたが、それは『私以外の人は』だ。


バトンの渡し方すらグダグダだった私に出されたのは「工藤、お前中畑にバトンの渡し方教えてもらえ」という辛辣なお言葉。


中畑先輩になんて絶対嫌!!


なんて言えるわけもなく、今現在運動場に中畑先輩と2人並んでいる。

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