その瞳をこっちに向けて


 今すぐにでも逃げ出したいこの現状。横目で中畑先輩を見ながら、

「嫌なら別にいいですよ」

と口にしてみるも、その言葉に含まれた、断ってくれないかなぁ…なんて甘い考えは意図も簡単に消されてしまった。


「嫌でも頼まれたもんはちゃんとするのが俺の流儀なの」



真面目かっ!!

その真面目さ、鬱陶しい!



そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ぽんっと私の手の中に渡された白いバトン。


「じゃあ、先ずはバトンの渡し方な」


そう言うと、私から少し離れた場所へと走っていく。


この場所から中畑先輩のいる所まで走ってバトンを渡せということなのだろう。



もう絶対に逃げられないし。



 仕方なしに一度諦めのため息を吐くと、意を決してギュッとバトンを握り締めてその場から駆け出した。

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