その瞳をこっちに向けて
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白かった雲がオレンジに色を変えて暫くしてやっと、今日の練習が終わりを告げた。
「今日はここまでな。まあ、なんとか形にはなったな」
「形だけですけども」
「後、1週間あるからなんとかなるだろ」
「だといいんですけど」
確かにバトンは結構スムーズに渡せる様になった。だが、走りに関しては中畑先輩の楽観的な考えは通らないと思う。
だって私、……生粋の運動音痴ですから。
どこか虚しい気持ちを隠すかの様にスッと運動場のトラックへ目を向ける。そして、自分が走っている姿を思い浮かべるとため息を吐いた。
「じゃあ、帰るか」
「ですね。それじゃあ」
中畑先輩にひらひらと手を振り、その場から歩き出そうとした時、何故だかガシッと腕を掴まれる。
後ろを振り返れば、そこには眉間に皺を寄せて苛立った表情をした中畑先輩。