その瞳をこっちに向けて

「何一人で帰ろうとしてんだよ」

「いや、だって友達はもう帰ってるし」

「送る」

「えっ？何でですか？確認は昨日しましたよね？」

「もうすぐ暗くなるし」

「知ってますけど、だから？」



暗くなるのなんて知ってるって昨日も言ったと思う。っていうか、こんな会話を昨日もした気がする。

もしかしてこの人、……バカ？



「だから！お前がストーカー行為をせずに家に入るのを毎日チェックしておかないと不安なんだよ！」

「ど、……どんだけ」



バカとかじゃなくて、仁先輩への愛が半端ないんだ！！

っていうか毎日チェックって、……流石に引く。



　私の顔が明らかにひきつっているのを見てか「何か文句あんのかよ！」と唇を尖らせる中畑先輩。



文句っていうか……。



「いや、もう何も言いません。中畑先輩はそういう人だと改めて認識した位です」

「そういう人って何だよ？」

「………………」

「何だよその目！」

「私の口からは何も言うまいです」

「はあっ！！どういう意味だよ！」


どれだけ凄まれたって絶対言わない。



仁先輩の事、好き過ぎてドン引きです……なんて。

言ったら絶対倍で返されるし。



　結局、中畑先輩は仁先輩への愛故にまたしても私の家まで付いてきた。その間も中畑先輩との攻防戦の様な会話は永遠と続いていたわけだけど。



これ、明日もなんだろうな。



ベッドに入って寝る前にそう思うと、はぁ…と一際大きなため息を吐いた。