その瞳をこっちに向けて


「こ、これは。……武者震いです」

「んなわけねーだろ、バカ」

「何でそんな事分かるんですか!私がそう言ってるんだからそうなんですよ!」

「いや、あれだけ走りが遅い奴が武者震いはない。もうちょっとましな言い訳考えろよ」



あっさりバレてるしっ!



でも、悔しいかな中畑先輩の言ってる事は筋が通ってる。


そして結果として、口で言い負かされてしまえば、

「う、うっさいですよ」

と唇を尖らせるしかない。


「まっ、あれだけ練習頑張ったんだからバトンはバッチリだよ。俺が保証してやる」

「バトンだけ保証されても」


ジト目を向ければ、中畑先輩がニカッと白い歯を見せる。


「大丈夫だよ。俺が巻き返してやるから、安心しろ」

「巻き返すって……」



自信満々にそう言い切るって凄いとは思う。

でも、それが絶対出来るかって言われれば微妙かもしれない。



 そんな私の考えを見透かした様にフッと笑う中畑先輩。

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