その瞳をこっちに向けて


 ピストルの音を合図に始まったリレー。やたらと声援が激しいのは、この種目が最後となるからだろう。


徐々に自分に近付いてくる順番に心臓がドクドクとやたら速く脈打つ。


順位は現在2位。


好調だと思う。が、問題は私の番で何人に抜かれるか…だ。見ただけでも分かる位、他のクラスも思っていたより皆速い。


 たった今、私の前の番の人が地面を蹴った。それを見届けると、2レーン目へと歩を進める。


走る体勢を取り、左手の掌を上に向け後ろに伸ばす。見た目はバッチリだと思う。


でも如何せん、パシンッと左手にバトンが渡った瞬間、地面を蹴り駆け出した筈なのに、直ぐ様隣の人が私の横を追い越していく。


私としては精一杯走ってるわけだけど、周りはもっと速くて次々と追い抜かれていく。


それでも走る以外何かが出来るわけもなく、やっとのことで目の前に見えてきた中畑先輩の姿に目頭が熱くなった。


 そこからは何度も練習したお陰かスムーズにバトンを渡す事が出来、私に代わって走り出した中畑先輩を目で追う。


走ってる時はいっぱいっぱいで、何人に抜かれたかハッキリ分からなかったが、どうやら私は4人に抜かれたらしい。



2位から6位になってるし。

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