その瞳をこっちに向けて


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 体育祭の閉会式が終わると、ドッと沸き上がるクラスメート達につられて私も頬を緩める。


あの後リレーは、最終走者である3年の先輩の頑張りによって見事に1位を取った。そのお陰か私達の縦割りのチームが総合得点で惜しくも1位を逃したが2位という結果に。


どこもかしこも打ち上げに行く流れが出来ている様で、その流れに漏れることなく1年4組もこれから打ち上げでカラオケだ。


 そんな中歩を止めると、だらだらと歩きながら一先ず教室に向かう生徒の中である人物を探して視線をさ迷わせた。



あっ、いた。



一度視界に入れば見逃す事はないその姿は流石としか言いようがない。


 その多くの人に囲まれて笑顔を振り撒いてる彼に向かってスタスタと歩を進めていく。


ただ周りに人が多く全く私が視界に入っていないからか、彼もどんどんと進んで行ってしまい、なかなか距離が縮まらない。


その事に小さなため息を漏らすと、仕方なしに大きく息を吸い込んだ。


「中畑先輩!!」


 大きく響いた私の声に反応して歩を止め、後ろを振り向く中畑先輩。


そしてその目に私が映る。

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