その瞳をこっちに向けて
「えっ……、どした?」
そう言いながら、何で自分の名前を呼ばれたのか分かっていない表情をしている。が、私はそのまま何も言わずに真っ直ぐ中畑先輩の真ん前まで突き進み、勢いよく頭を下げた。
「中畑先輩。……ありがとうございました」
「えっと、……何が?」
突然の事に困惑した声が降ってくる。
それに一度唇を噛み締めると、ゆっくりと口を開いた。
「その、…………巻き返してくれて」
「ああ。約束したからな」
カラッとした口調でそう言い切ると共に、ぽんっと私の頭の上にのる手。
その手の重みにカァっと顔が一気に熱くなる。
その私の変化に中畑先輩も気付いたのか、頭の上に手をのせたまま私の顔を覗き込んできた。
目の前にやってきた中畑先輩の顔は王子様だけあって凄く整っていて、ドクドクと心臓が大きな音をたてはじめる。
「どうした?お前、熱でもあんのか?」
中畑先輩がそう言葉を放った瞬間、パシッと頭の上にあった中畑先輩の手を払い、一歩後ろに下がると自分の腕で顔を隠す。