その瞳をこっちに向けて
「川に何かあるんですか?」
その質問に美音さんが再び悲しそうに視線を落とす。
「その……、実は……。落としてしまって」
何を?と思い首を傾げると、美音さんは言いにくそうに胸元をギュッと掴んでからゆっくりと口を開いた。
「その、……ペンダントを」
ペンダントって……ーー
「えっ!それってお揃いのやつですよね!?」
「は、……はい」
凄い嬉しそうに話していたあのペンダントが、現在この川の中って。悲しい顔をして川を覗いていたのが頷ける。
しかも、今から雨が激しくなる予定。
「どうしよう……。やっぱり私、探しに行ってきます!」
今にも泣きそうな顔をしてそう言い切ると、下駄をからん…と鳴らして駆け出そうとする。
その後ろ姿と下駄の音があまりにも綺麗で。
気付いたら右手を伸ばし美音さんの腕を掴んでいた。