その瞳をこっちに向けて


「心配……してくれたんですか?」

「当たり前だ!」


中畑先輩の口から即座に出たその答えに、胸の奥がほわっと温かくなる。



心配……してくれたんだ。



そう思った瞬間、自然と口角が上がり「そっか」と呟いていた。


 再び中畑先輩の顔を見やると、もうすっかり雨に濡れてしまっている。どうやら持っていた傘を投げ捨てて私の所へ来てくれたらしい。


だからか、風に煽られた中畑先輩が持っていたのだろう傘が、今にも川辺から道路へと飛んでいきそうになっている。



道路に飛んでいったら危ない。

けど、……それほど私を心配して慌てて来てくれたってことだ。



そのことに頬が緩みそうになるのを耐えると、動かせる指でスッと道路の方を指差した。


「中畑先輩。傘、道路に飛んでいきそうですよ」

「えっ!ヤバッ!」


 傘に気付いた中畑先輩は、私を抱き締めるのを止めると、道路に飛んでいきそうになっている傘へと駆け出していく。

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