留学恋愛
接近
雪が積もった石畳の道は歩きにくい。今までで一番寒い気がした。お昼を食べに5人で移動をしていると道の狭さから私と偶然会った彼が並んで歩く形になった。彼は昨日あれからどうしたの?と話しかけてきた。私は単語並べフランス語で答えた。そして名前をもう一度聞いた。発音が難しく何度も言い続けるなかなか彼は頷かなかった。するとユカさんが、「ムンドでいいのよ。」と私と彼のやりとりをみて笑いながら言ってきた。
「ムンド?」と私が言うと彼が嬉しそうに頷いた。信号が赤になった。ケンジ君が寒いと言った。ムンドがいるから日本語はやめようとさっき言ったばかりなのにもう彼は限界だったようだ。それにつられ皆寒いと言い雪が靴や首に入らないようにチェックをした。しぐさでわかったのかムンドも首をぶるぶるっとした。ぷっくりとした彼の体型をさらに丸くみせていたダウンのチャックが少し開いていた。私は手を伸ばして彼の首元までチャックを上げた。彼は少しびっくりしていたがにっこりしてくれた。私と彼の間に柔らかい空気が一瞬流れた。それをみたユカさんは、「何するのかと思ったらトモカちゃんて可愛いわね。」と言ってくれた。
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