イジワルな初恋
「梨々香、こっちこっち」
手招きをしたのは、古藤紗世(ことうさよ)。中学時代、私をイジメていた張本人だ。
なんの迷いもなく笑顔で名前を呼ばれても違和感しかないけど、私は大人になったんだと心の中で唱え、言われた通り古藤さんの隣に座った。
「まだ来てない奴らもいるけど、十年振りの再会、楽しみましょう。乾杯!」
顔と名前が一致しないけど、幹事らしき男性が立ち上がってジョッキを高く上げた。
「久しぶり~、元気だった?」
古藤さんは茶色くて長い髪を触りながら私を見ているけど、私は目を合わすことができない。
「ん、まぁ」
「ほんと雰囲気変わったよねー。もしかして結婚してる?」
「いや、してないけど」
「目、そんなパッチリ二重だったっけ?まさか整形?」
「……してないし」
「相変わらず口数少ないね、そこは変わってないんだねー」
好きで喋らなかったわけじゃない。誰のせいであんなつらい中学生活送ったと思って……、あーダメだ。楽しみたくてきたのに、これじゃ十年前となにも変わらないじゃん。
普段の私はこんなんじゃなくて、どちらかといえばハッキリとものを言う方なのに……。
「こ、古藤さんは結婚してるの?」
「ちょっとヤダー、古藤さんなんて、紗世でいいよ」
紗世……なんて一度も呼んだことないし。
「残念ながらまだ独身。なかなかいい人いなくてねー」
不思議。私は十年前のことをハッキリと覚えてるのに、古藤さんはまるで全て忘れてるかのようだった。
イジメる側は簡単に無かったことにできるってことなのかな……。
私だって、別に今までずっと悩んでたわけじゃないし、同窓会の案内がくるまではほとんど考えたこともなかった。
でもなんか、ちょっとだけ悔しいきもちになる私は、小さい人間なのかな……。
手招きをしたのは、古藤紗世(ことうさよ)。中学時代、私をイジメていた張本人だ。
なんの迷いもなく笑顔で名前を呼ばれても違和感しかないけど、私は大人になったんだと心の中で唱え、言われた通り古藤さんの隣に座った。
「まだ来てない奴らもいるけど、十年振りの再会、楽しみましょう。乾杯!」
顔と名前が一致しないけど、幹事らしき男性が立ち上がってジョッキを高く上げた。
「久しぶり~、元気だった?」
古藤さんは茶色くて長い髪を触りながら私を見ているけど、私は目を合わすことができない。
「ん、まぁ」
「ほんと雰囲気変わったよねー。もしかして結婚してる?」
「いや、してないけど」
「目、そんなパッチリ二重だったっけ?まさか整形?」
「……してないし」
「相変わらず口数少ないね、そこは変わってないんだねー」
好きで喋らなかったわけじゃない。誰のせいであんなつらい中学生活送ったと思って……、あーダメだ。楽しみたくてきたのに、これじゃ十年前となにも変わらないじゃん。
普段の私はこんなんじゃなくて、どちらかといえばハッキリとものを言う方なのに……。
「こ、古藤さんは結婚してるの?」
「ちょっとヤダー、古藤さんなんて、紗世でいいよ」
紗世……なんて一度も呼んだことないし。
「残念ながらまだ独身。なかなかいい人いなくてねー」
不思議。私は十年前のことをハッキリと覚えてるのに、古藤さんはまるで全て忘れてるかのようだった。
イジメる側は簡単に無かったことにできるってことなのかな……。
私だって、別に今までずっと悩んでたわけじゃないし、同窓会の案内がくるまではほとんど考えたこともなかった。
でもなんか、ちょっとだけ悔しいきもちになる私は、小さい人間なのかな……。