イジワルな初恋
図書館に着くと、私たちはいつもと同じ一番奥に座った。

向かい合って座わり、それぞれ勉強を初めた。分からないところがあると中矢君は私に聞いてきたりしながら、静かな時間を過ごす。



『ねぇ、中矢君』

『ん?』

『ずっと思ってたんだけど、勉強教わるなら山野井君の方が成績良いのに、なんで私なの?』


中矢君は、ペンを持つ手を止めて私の顔を見た。

『んー、別に理由はないけど……』

そう言ってすぐにまたノートに視線を移した中矢君が、少しだけ恥ずかしそうな表情をしていたように見えたのは、私の気のせいかな。



こうしてただ勉強している中矢君を見ていると、たまに不思議な気持ちになることがある。

二年間苦しんでいたはずなのに、中矢君が声をかけてくれたおかげでこんなにも普通に笑えるようになれたこと。

学校の中ではやっぱりまだ少し小さくなってしまうけど、学校に行きたいって思える日がくるなんて、未だに信じられない。

中矢君て本当は妖精?なんてバカなことを考えたりしちゃうくらい。


『なに見てんの?俺の顔になんか付いてる?』

『ううん、なんでもないよ』


こうしていられるだけで私は幸せだから、本当の気持ちは閉じ込めたままでいい。友達として一緒にいられれば、それでじゅうぶん。


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