さよならは言わない
出勤した私を迎えるのは毎回のことながら冷たい視線だ。
特に営業一課の江島さんとその回りにいる社員たちの嫌味は相も変わらず連日続けられる。
「笹岡、今日は打ち合わせに行く。同行するように」
「私もですか?」
「荷物持ちしかならないだろうがな」
それでも、この職場の異様な雰囲気からは逃げ出せる。
こんなことを考える私はやっぱり心の弱い女だと感じてしまう。
今はそんなことは考えないようにしよう!
折角、外回りに連れ出してくれるのだから。思いっきり羽を伸ばさなきゃ!
「森田さん、今日の打ち合わせはどこへ行くんですか?」
「まあ、その辺」
「その辺って?」
「その辺はその辺だ」
多分、私を気遣っての外回りだと思うと、森田さんも仕事の鬼の割りには甘い部分もあるのだと思った。
つい、仕事での森田さんのイメージに合わなくて笑っていると、かなり不機嫌な顔をされた。
私の考えていたことがバレバレだったのかも?
「何が可笑しい?」
会社を出ると森田さんの顔は仕事モードから休憩モードの柔らかいリラックスした表情へと変わる。
「別に、何もないです。ただ、森田さんも仕事の鬼ばかりじゃないと感心してました」
「感心? 何をだ?」
「やっぱり江島さんから専務を横取りしたって言われたくないので」
森田さんは困った様子で頭をクシャクシャにかいていた。