さよならは言わない

勤務初日は2時間の残業で、帰宅途中のコンビニで適当にお弁当を買って帰った。

お弁当を食べシャワーを浴びてベッドに横になっていたらいつの間にか眠っていた。

こんなに疲れた仕事は初めてだった。



だけど、翌日からは「もう慣れてきただろう?」と容赦ない森田さんの仕事量の多さに私は思わず窒息しそうになった。

私は節約し少しでも給料を貯蓄に回したいのに、この森田さんのお蔭で昨夜の夕食も今朝の朝食と昼食もコンビニ弁当という高額出費に繋がってしまった。

お昼ご飯中に大きな溜息をついていると、一緒にご飯を食べていた友美が心配そうに私の顔を窺っていた。


「大丈夫なの? あの森田さんってやり手でお得意様を納得させるだけの資料を準備するのよね。絶対に有無を言わせないような、俺に任せれば大丈夫と言わんがための資料を作るのよね。だから大抵の仕事を契約に持ち込むのだけどね」


何となく友美の話を聞いていて納得した。

企画書なのに何もかもが細かくて既に契約した物件を扱っているようなデータ作りなのよね。

この業界は初めてで何も分からないけど、森田さんと一緒に仕事したらきっと1年もすればこの仕事をマスターしてしまいそうだわ。

昼食時間はまだ残っていたけれど、いつまでも食堂でのんびりと友美と世間話をしている暇はない。

私には午後からの仕事の下準備が必要だ。


「ごめん、私、もう戻らなきゃ」

「ええっ? まだ休み時間20分も残っているのよ?!」

「ちょっと調べたいことがあるのよ」

「絵里って真面目過ぎるよ! 休む時はしっかり休まなきゃ体がもたないわよ!」


友美は私を引き留めようとしたけれど私にはそんな時間はない。

午後からの業務で調べたいことがある。それは私の知識不足だから業務時間外に調べるしかないわ。

会社のパソコンを使うのは大目に見てもらわなきゃいけないけど。

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