さよならは言わない

周りの騒々しさに気付き目を覚ました私は、聞き覚えのある声に思わず飛び起きてしまった。

すると、尊の姿が目に入り以前蔑まれ捨てられた時の恐怖が甦ってきた。

すると、息もつけないほどに苦しくなり気が遠くなりそうだった。


折角、友美のお陰でカボチャだと思い冷静でいることが出来そうだったのに、心の奥底に押し込めていた感情が溢れ出てしまった。


「笹岡さん、掛かり付けの病院で治療を受けているの?」

「いいえ。今は特にはないです」

「一度検査を受けた方が言いと思うわ。あなた顔色は良くないし血圧も低すぎるし不整脈も感じられるわ」


看護師の説明に私も友美も何も言えなく黙りこんだ。

その様子を見て尊が私の方へ歩み寄ろうとするのを友美がそうさせなかった。

私の前に立ちはだかり寄せ付けようとはしなかった。

その様子を観察するように黙っていた森田さんだが、まるで重い口でも開くかのように話し始めた。

 
「室長、大丈夫です。責任もって私が病院へ連れていきます。私は彼女の直属の上司です。彼女に倒れられては仕事が出来ません。それから、専務、倒れた原因が専務にあるのでしたら勤務時間内の通院は問題ありませんよね?」

「それは構わないが……」


森田さんの申し出を尊も友美も拒むことは出来なかった。

そして、勤務時間内に倒れ迷惑をかけた森田さんの言葉に従うしかないと私は病院で検査を受けることにした。

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