さよならは言わない

「今日の昼ごはんは何を食べた?」

「昼は、友美と一緒に社員食堂で定食を食べたわ」

「残さず食べたのか?」


全部は食べられなかったけど半分以上は食べたと思う。

だから、軽く頷いた。

すると、尊は溜め息をついて私の顔を呆れたような目で見た。

エレベーターの前までやって来ると下ろしてもらったけれど、少し足下がふらつくと尊に肩を抱き止められた。


「あまり食べてないだろう。以前に比べ軽すぎる」

「そんなことない」


確かに痩せたのは認めるけど、それでも最近はすこしはよくなった方だ。

美香を亡くした直後はそのショックで食事が喉を通らずに体重が激減した。

その当時のことを尊は知らないから。


役員専用エレベーターの扉が開くと抱き寄せられながらエレベーターの中へと入って行った。

肩を抱く尊の手に緊張してしまっている。


「監視が必要のようだな」

「監視?」

「油断すると健康管理を怠るだろう。だから、俺が絵里の健康管理をする」


私の健康管理を? 
私なんて尊は何とも思ってないんでしょう?
なのに、どうしてそんな事しようとするの?


「絵里、俺のマンションへ引っ越すんだ。今から荷物を取りに行くぞ」


尊のマンションへ引っ越す?!
どうして健康管理の為に尊と一緒に住むの?
それに、尊と暮らしたら私はどうなるの?

契約期間が終った時、尊のマンションを追い出されたら今度こそ立ち直れなくなる。

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