さよならは言わない
尊の顔色を見て私は自分が何を話したのか気付いた。
今の言い方だとこの子は尊の子どもだと言っている様なものだと。
尊は手を震えさせながら美香の仏壇に触れていた。
そして、辛そうな顔をするとハンドルを数回叩き頭を抱え込んでいた。
暫く沈黙が続き息苦しくさえ感じる。
「こんな話するつもりなかったの。ごめんなさい。忘れて」
「俺に自分の娘を忘れろと言うのか?! 俺の娘が死んだのを知らずに、生まれたことすら知らされずに俺は一度も自分の娘を抱くこともなく死んだんだぞ!」
「ごめんなさい」
尊に捨てられ悲しみに涙する毎日だったけど、お腹に美香がいてくれたから私には新たな希望が生まれた。
尊の非情さに妊娠は伝えなかった。だって、妊娠をほのめかした私を金目当ての女だと蔑すみ罵しり追い出したのだから。
捨てた人に言えるわけがない。言えば中絶させられると思ったからよ。
「この子の墓はどこだ?」
「近くの共同墓地よ。」
「娘に会いに行く。案内しろ」
尊を美香が眠る共同墓地へと案内した。そこは狭い中にたくさんの仕切られた棚が並ぶ納骨堂で、とても静かで寂しい場所だった。
尊は辺りを見回しながら美香が眠る棚を見て表情を曇らせていた。
「俺の娘がこんな寂しい所に一人でいるのか? 不憫すぎる」
尊の目から涙が流れていた。
私が勝手に産んだ子だからと責められるかと思ったけれど、尊は美香の死を悲しんでくれている。
「私の家は両親が親から独立して家庭を築いたからまだお墓はなかったの。両親も健在で……」
美香には可哀想だけど寂しい思いをさせるけれど仕方がなかった。